絶版車シャレード


ダイハツ・シャレードもついに絶版車の仲間入りとなりました。
1977年に登場し「カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞し、発売以来、約20年で地味ながらも166万台も生産された名車でした。


●デビュー直後は絶好調

当時の世相は、経済成長で贅沢がもてはやされるなかで、オイルショックが起こり、資源の無い日本がいかに危いか国民が実感した時代でした。節約とか省エネという言葉が盛んに使われるようになったのもその頃でした。
そんな時代背景に抜群のタイミングで発売されたのが、ダイハツ・シャレードでした。安くて燃費が良く、でも軽自動車ではないので居住性や走りもある程度は期待できる、しかもデザインも個性的。そんなシャレードは庶民の味方となり、爆発的とはいわないが、価値のわかる人たちで静かなブームとなり、たいへん好調に売上を伸ばしました。

しかし、オイルショックのダメージが薄らいでくると、省エネは掛け声だけになり、人々はまた高級志向になっていったのです。その頃には、シャレードが創生したコンパクトカーというジャンルに他のメーカーが次々に参入してきました。
シャレードもモデルチェンジで、ターボモデルを出したり、デトマソとの友好関係から生まれた「デトマソ・ターボ」など、若者にもターゲットをあてる努力はしたようです。

 
●3代目は斬新なデザインだったが・・・

確かに色々な人の様々なニーズに応えることは難しいでしょう。だが、人々の要求を3代目シャレードで安易な方法で実現させてしまったのです。それは、車両サイズを大きくして、排気量も1300を導入してしまったのだ。居住性や走りの快適さを求めるのにサイズや排気量を大きくすれば簡単に達成できてしまいます。でもそれでは、シャレードでなければならない理由がなくなるわけです。ワンランク上の車なら他のメーカーにもあるわけですから。実際にトヨタの人気車種「スターレット」とかち合ってしまったわけです。だったら、性能も良いし、販売店も多いし、シャレードより安いし・・・となればスターレットとかマーチの方を買うでしょう。

3代目シャレードは賛否両論ありましたが、批判的な意見の多くがデザインに関するものでした。歴代シャレードの中でも、この3代目は斬新なデザインだったため、好みが分かれるのも当然でしょう。シャレードは実用車として地味であるべきだという意見もあったようですが、私は3代目のデザインが一番好きだったのです。それより問題にすべきは、車体を大きくしてしまったことと、1300を導入してしまったことでしょう。やはり原点に戻って、小さくて快適なリッターカーであってほしかったと思います。
 


●4代目は平凡で不人気・・・もはやリッターカーではない

 
そして4代目の発表・・・楽しみにしていたのですが、その姿を見て、「こりゃダメだ!」と思いました。サイズは大きくてデザインは平凡で無個性、元祖リッターカーなのに1000ccを廃止して1300に(その後1500まで導入)。現在国内のどのメーカーも性能に大差はないので、車選びにはデザインが重要なポイントになるのです。それがこれじゃあ・・・フロントのマークをトヨタにしても日産にしてもマツダに取り替えても分からないような、どこにでもありそうな平凡なデザインです。飽きがこないと評価する声もありましたが、「だったら買いますか?」となると・・・?です。
4代目シャレードの記者発表会 (1993年1月29日 ニューピアホールにて)

テレビ神奈川(TVK)の新車情報では、レポーター(その日はいつもの三本和彦氏ではなく確か山口京一さんだったかな?)も久々に好感が持てる車と評価していましたが、やはりデザインの平凡さは指摘していたようです。それに対してメーカーの担当者は「いつまでも飽きがこない」とかいろいろ理屈を並べていましたけど。そしてレポーターが「じゃあ、噛めば噛むほど味が出るガムみたいなものですね」とか言ってました。
そしてメーカー担当者が、「主婦にターゲットを絞ってセカンドカーとして乗ってもらいたい」と発言したのには失望しました。シャレードの原点はあくまでもファーストカーなのです。タレントの田原俊彦氏を起用した3代目シャレードのコマーシャルのキャッチコピーは、「君へファーストカー」だったのですが、4代目ではメーカー自らセカンドカーにしてしまったのです。セカンドカーならスターレットやマーチのほうが人気があるでしょう。その結果、さっぱり売れなかったのは言うまでもありません。そこでカンフル剤として登場させたのがデトマソ仕様車だったわけですが。

トヨタの完全な子会社となってしまったダイハツでは、スターレットと重複する中途半端なシャレードを生産する価値がないわけだから、生産打ち切りも仕方ないでしょう。今ではダイハツは、トヨタグループの軽自動車部門でしかないのですね。ストーリアを創るくらいなら、シャレードを原点に戻せばよかったと思うのですが、一度グレードアップしてしまったものを、ランクを下げるのはなかなか決断できないのでしょうか。
私はスターレットにも乗りましたので、その素晴らしさもわかっていますが、細かいところの作りはシャレードのほうが丁寧なのです。スターレットは巨大メーカーの中の最下級車種で、若者の入門車か奥様の買い物用のセカンドカーとしてのニーズが大きいのです。それに対してシャレードは小さなメーカーが社運を賭けて創り出した主力車種なのです。小さい車に関するノウハウはダイハツのほうが優れています。だから、シャレードを原点に戻さないとした場合でも、そのまま生産を続けて、トヨタにはそれをスターレットとして供給してもよかったのではないでしょうか。

ダイハツは実用的な3気筒1000ccや世界最小の乗用車用ディーゼルエンジンなど、世界に誇れる技術を持っていながら、世の中のニーズに応えるのも宣伝も戦略も下手なメーカーです。私はダイハツのそんなところもなんとなく好きなのですが・・・とにかく大阪にしては商売が下手なメーカーですね。
  
●アプローズも同時に生産打ち切り
一応華々しいデビューを飾ったシャレードとは違い、アプローズはスタートからつまずいた車でした。ダイハツが自信をもって自社開発した最上級車(ダイハツでは)だったのですが、発売直後のトラブルで一生マイナーなイメージがつきまとう不運な車でした。どのメーカーでも新型車の発売直後は些細なトラブルが多発するのが普通です。アプローズは燃料タンクの吸気系の不良で燃料がにじみ出てしまったのです。しかもそれに引火してしまい炎上してしまったのです。原因は些細なことでも、車にとって火を噴くことは致命的です。マスコミにも「火を噴く欠陥車」として取り上げられ悪い意味で有名になってしまいました。でも車体やエンジン自体は高性能なので、改良を重ねて売り続けました。デザインも高級感があり、4ドアに見えて実は後がハッチ状に開く5ドアセダンという珍しい車でした。でも、ダイハツ関係者以外は買わないといわれるほどマイナー車の代表的存在でした。
シャレード・デトマソのエンジンはそのアプローズのエンジンを転用したものです。同時期に絶版になるのは、なんだか感慨深いものがあります。


●中国では大人気! 国内でもいつか復活を!
日本国内では絶版車となってしまいましたが、シャレードの名はダイハツが技術協力していた中国で「夏利」(中国読みで、シャーリー)として生産され欧米にも輸出されています。タクシーに多く利用されていますが、一般にも好評なようです。地域によっては街中のタクシーのほとんどが夏利のようです。3代目シャレードがベースでしたが、最近トヨタ主導でプラッツベースでフルモデルチェンジしたようです。でも、価格の安さから旧モデル(3代目シャレード)の方が人気があり、しばらくは併売するようです。とにかく、「天津夏利」という会社名にもなっていますので、名前だけはしばらく残るでしょう。

シャレードが中国の大地で、人々の足として元気に走り回っていると思うと感動します。日本ではハッチバック車のタクシーなど見かけませんし、3代目シャレードの後部座席は決して居住性が良いとは言えない(このクラスとしてはトップレベル)のですが、経済性と実用性を重視する中国では正当に評価されているわけです。

ダイハツのかつての名車「ミゼット」が最近「ミゼットU」として復活したように、シャレードもいつの日にか国内でも復活してほしいものです。
▲夏利タクシー ▲夏利(ソシアル)のタクシー ▲タクシーは夏利が多い







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